皆さん、初めて求人情報誌を読んだ時のあの気持ちを覚えていますか。「世の中にはこんなにたくさん仕事があるのか」というあのときめき、またどれもこれも魅力的な文言に溢れている。世界は煌いている、そんな気持ちがしたものです。

もちろん、現実はそれほど甘くありません。

街角のバイト募集の張り紙から、大手の求人サイト、高収入と叫びながら異常な歌を垂れ流しつつ走るあの車、あるいは就活エージェントまで、世の中は求人オファーだらけです。人を雇うためには、実にたくさんの資源や労力が使われています。

労働者としてやっていく場合、世の中にあふれているこれらの求人のどれかを選んで自分の仕事にすることになるわけですが、もちろん世間の求人というのは玉石混淆、っていうか石の方が多い、石だらけ、たまにめっちゃ尖ってて握ったら大出血。そんな感じです。

そういうわけで、あなたが仕事を見つけようとした場合何らかの求人サイトを見るかエージェントを頼ることになりますが、ここには当然の如く無数のトラップが存在します。

ブラックは論外として、典型的なのは「出世できない職場」です。絶対とまでは言いませんが、出世の見込みがいちじるしく薄い職場というのは存在します。そういう職場にうっかり入って数年たつと、誰でも「これ先がねえな」と思えてくるのですが、そうなる前に避けたいところです。

求人サイトは味方じゃありません

まず求人サイトの話をしましょう。分かっている人は分かっている話ですが、ここで押さえておくべき重要ポイントがあります。それは「求人サイトのお客は、求職者ではない」ということです。

あなたが求職者として求人サイトを見るとき、お金を払うでしょうか?もちろん払いませんね。じゃあそのサイトはだれの払ったお金で運営されているでしょうか?もちろん、求人を出す会社ですね。じゃあ、求人サイトはどちらの味方でしょうか?

もうおわかりでしょう。求人サイトはけして求職者の味方なんかではありません。

求人募集は茶の湯の世界

そもそも求人募集は誰が書いているのでしょうか。いろいろなケースがあるでしょうが、もっとも多いと思われるパターンは、求人サイト営業のヒアリングを元に、ライターが書くケースでしょう。あるいは求人サイト営業の人がダイレクトに書きます。

つまり、求人サイトや求人誌の中の人が書いているわけですね。彼らの手によって、求人広告はリーガルかつポリティカル・コレクトネスに沿った形に書き換えられます。たとえば男女雇用機会均等法というものがありますから、クライアントがいくら片方の性別だけを雇いたいと思っていたとしても、それを大っぴらに書くわけにはいきます。ですので「女性が活躍する職場です」というアレが出てきちゃうわけですね。

このような過程で「中高年のキャリアパスがありません」は「若手が活躍する職場です」に書き換えられ「陰キャはお呼びじゃありません」は「明るく元気なスタッフが活躍」に書き換えられ「いきなり現場に放り込まれます」は「OJTで先輩社員が優しく指導」に書き換えられます。「短期間で圧倒的成長」に関しては「たまに確変するけど大体死ぬ」みたいなニュアンスです。

キリがありませんからこの辺にしておきますが、こういった仕組みのもとで、求人サイトというのは運営されているということをご理解ください。これはいわば「茶の湯」です。茶番といってもいいかもしれませんが、ようするに「一定の約束ごと」があって、それに沿ってコミュニケーションが展開されているわけです。そのうえで必要な作業は何でしょうか? もちろん「解読」です。お作法を理解し、真意を読み取ることが必要になります。

ウソだらけに見えた求人情報も「何故ライターはこういう書き方をするのか?」と「その裏にある本音は何か?」を読んでいけば、実は案外リアルな情報が拾えます。むしろけっこう正直ですらあります。大人茶道を嗜めるようになることがとても重要です。

求人サイトが地雷だらけになるしくみ

ところで、古本屋さんって好きですか?僕は大好きです。

古本屋では誰もが欲しい本を買って、いらない本を売ります。そういうわけで、お店にはだんだんみんながいらないと思う本がたまっていきます。お店側のキュレーションがないと、日々資源ごみの集積に近づいていきます。実際に神田神保町とかに行くとそういうタイプの古本屋も存在します。あれはあれで「俺ならゴミの山から宝を見つけられるぜ!」という皆さんには楽しいものなのですが、これは求人広告のお話です。

そう、誰もがやりたいと思う仕事は、紙面に出ると同時に就職者が発生して求人から消えていきます。逆に、誰もがやめたいと思う仕事は常に求人募集をしています。もうおわかりでしょう。求人広告というのは原理的にゴミの山なのです。それは求人広告の運営側が悪いわけではありません、そりゃそういうことにもなりますよ。お金払ってないんですから。素直にゴミの山から宝を探すしかありません。

エージェントが最初に勧めてくる求人はヤバい

求人サイトではなく就職エージェントも本質は同じです。就職エージェントは、多かれ少なかれその種のババ抜きのババみたいな求人を抱えています。リーチ一発ツモ、黒のみみたいな話が多々あります。

あなたがよっぽどレアな人材でないかぎり、エージェントは初見の客にはまずそれらの「黒」案件をはめ込もうとしてくると思って間違いありません。そう、彼らも仕事ですから仕方ないのです。社会人ならこれに文句はつけられません。

そんな時は、とりあえず就職する気は見せながらもやんわり案件を蹴るしぐさをするしか方法はありません。向こうは「選んでいる場合ですか」などとスゴんできますが、就職する気がないと判断されない程度に選ぶ態度を見せましょう。うまくこのあたりのセレモニーをこなせば、エージェントは内心舌打ちしながら、もっとマシな案件を出してくるでしょう。

前述のとおり、求人ビジネスの顧客は求職者ではないのです。顧客は求人を出している企業であって、その顧客に売りつけられる商品が求職者です。

尚、借金玉さんは会社を潰したあと「サラリーマン・・・やるか」と思って求人エージェントを使ったら「部下を怒鳴るのに理由が必要な奴は上司になれない」という部長の名言が記憶に刻まれている某社を紹介され、とても良い笑顔になりました。

労働市場を生き抜くためには

大変生臭いお話ですが、このような事実をカッチリ認識せずに求職をするというのは、どんな状況であれ、全裸にお財布だけ持ってスラムをうろつくようなものだと言っていいでしょう。資本主義市場はサバンナで、営業マンは肉食です。虎を使いこなすには、それなりの技術が必要です。

これらの前提を踏まえ、自分に有利なようにうまいことサービスを利用することができれば、いい仕事に巡り合うまでにハズレを引く回数はグッと減るはずです。そうなることを願っております。基本のキのお話でしたが、やっていきましょう。