2016
01.08

返報性と一貫性による無意識のバイアス

人材育成

返報性による心理バイアス

前回、「意識的に与えた情報は批判的に捉えられるため、口説かない口説きを実践することが重要である」と述べてきました。そして、そうした口説きを実践する上で「無意識」のバイアスが大切になってきます。

そして、無意識のバイアスのひとつに返報性という心理バイアスがあります。返報性とは、人から何か(贈物、頼み事、招待など)をしてもらった場合に、そのお返しをする義務があると思うことを示しています。この心理バイアスを使って、採用活動を円滑に進めることができます。

例えば、採用したいと思った学生だからといって何度も会ってしまうと、色々な用事を済ませてしまって次に会うための口実がなくなってしまいます。そこでネタの1つとして学生に頼みごとをするというのが有効的になってきます。例えば、興味を持った学生に対して「懇親会を開催しようと考えているから、申し訳ないけど周囲の友達を集めてくれないかな」とお願いをすることです。すると、人事担当者は学生に対して「申し訳ない、ありがとう」という感情が働くので、「お礼に飲みに連れていくよ」と自然に学生と接触するための大義名分を作ることができます。

返報性の応用

返報性による心理バイアスを活用した、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックという譲歩誘導法というものもあります。これは交渉の妥結点よりも、あえてハードルの高いことを最初に要求することを指しています。例えば、既にいくつか内定を持っている学生に対して最初に「今、全ての内定先企業に辞退の電話を入れてほしい」と要求をします。しかし、それに対して大概の学生は「全部は辞退できません」と返答します。そこで、「では、うちの会社と比べて内定を受けたいと思う会社を1社に絞ってほしい」と発言します。すると、はじめから交渉の妥結点を提案するよりも、最初に厳しい要求を挟んだ上で妥結点を提案する方が、承諾される可能性が上がります。

また、内定者だけでなく辞退者も大事にする必要があります。なぜなら、辞退者は企業に対して必ず負い目を感じています。そのため、何か自分にできることがあれば補償してあげたいと考えています。したがって、辞退者に対して「自分の周りにいる人や後輩を紹介してくれないか」とお願いをすると、頑張って紹介してくれるケースが多いです。これらも返報性の変形と言うことができます。

一貫性による心理バイアス

無意識のバイアスに一貫性という心理バイアスもあります。一貫性とは、一旦選択したことに対して、困難を乗り越えてでも続ける責任があると思うことです。

一貫性の心理バイアスには、フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)というものが存在します。これは、先ほどのドア・イン・ザ・フェイス・テクニックとは逆にハードルの低い要求からしていき、最終的に妥結点に持っていくやり方です。イメージとしては、例えばAさんが家電量販店の「先着5名様パソコン1台3万円」とチラシを見たとします。そこで、Aさんは家電量販店へ行きましたが、既に5台が売り切れていました。しかし、パソコンを買うという承諾をAさん自身の中でしてしまっているので、隣の10万円のパソコンを買って帰りました。これが、一貫性です。

一貫性を採用活動でどのように活かすのか

これを採用活動の中で活かす場合は、まず候補者の要求に合う自社の共通点を探します。例えば、候補者が大きい仕事をしたいという理由で商社を志望していたとします。その時、その候補者を自社に取り込みたいと考えたら、「商社と同じように自社も大きい仕事ができます。なぜなら○○だからです」と伝えて下さい。まずこれで候補者に対して、自社は商社と同じように大きい仕事ができるからいいなと思わせることができます。そして、その後で「自社には△△な面もあれば、□□な面もある」と違う柱を構築していき、最初にフックした話はフェードアウトさせていきます。その結果、自社は自分にとって良い会社という候補者の中で承諾した印象だけが残ります。また、その根拠が商社と差別化された別の理由によって形成されているので、自社に対する志望度を強くすることになります。

3行まとめ

無意識の心理バイアスを活用することで、採用活動を円滑にする。
返報性の性質を活かして、あえて最初に高いハードルを要求する。
一貫性の性質を活かして、最初に難易度の低い要求をする。

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