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古典的キャリア理論

古典的キャリア理論

古典的なキャリア理論の考え方。それは、「早く自分の志向を認識して、早くその方向に走り始める」ということが基本となっています。このことは職人やスポーツ選手、芸術家など、一人前になるのに10年、20年かかるような業界では現代でも成立します。例として挙げたのが上の図、エリクソンのライフサイクル理論です。ライフサイクル理論では、図のような順番で発達課題をこなしながら成長していくものだという、一定の志向性があるという考え方となっています。
多くの採用面接や社員面接を行ってきて感じることは、ライフサイクル理論の13-21歳に獲得される自己同一性、アイデンティティ-と言い換えることができると思いますが、これをしっかりと持っている日本人が少ないということです。そしてエリクソンが自己同一性の対立概念としている役割意識。日本という国は役割意識をより重視する文化のように思えます。その場に合わせて自らのポジションを考える役割意識。どんな場でも変わらない自分らしさ、というのは日本においては「KY」と言われることが多いものです。ですので、アイデンティティーが絶対的に必要かと言うと、そうではないでしょう。

キャリアにおけるwill/can/must

「好きなことが見つからない」という学生は多いものです。そういった時、「好きなことが見つからないというのは、そもそも”ない”んだと思う」という話をします。だからといってこの学生の意識が低い、ということではありません。確固たるアイデンティティーを発揮するよりも、その場の中で何をすれば役に立つのか、といったところを喜びとして生きていく人なのだと解釈しています。キャリアを考える上で、will=やりたいこと、can=できること、must=やるべきこと。この3つが大きく重なっている選択肢を選んでいくことが、その人にとって”良いキャリア”となるでしょう。
しかしキャリア教育に携わっている方の多くは、「やりたいことをやるべきことにして、それをできるようにしましょう」と言ってしまいます。簡単に言えば、好きを仕事にするということです。しかし、キャリアを考えるにあたって、この順番は疑問が残ります。前述のように、多くの人は明確なwillを持っていない、もしくは見つけていません。それなのに、大学のキャリアセンターさんなどを始め、will、will、willと言ってしまう。その場で取ってつけたようなwill、一週間程度で出てきたwill。それらを元にキャリアを考えても、打倒な選択をする可能性は低いのではないでしょうか。
私の考えは、基本的にこれと逆。つまり、できることを仕事にしていく、という順番を各所で述べています。できることを仕事にしていくと、できるから成果が出ます。成果が出れば褒められ、認められます。そうすれば、そのことがやりたいことへとなっていくのです。can、must、willです。できることを仕事にする、成果が出て評価される、評価されるのでやる気が出る。この流れが合理的であると考えられます。

キャリア理論に基づく人材フロー戦略における優先順位

様々な人材フローを考えるにあたって、その優先順位づけは「コントロールしにくい部分から」が鉄則です。そして、日本では解雇規制があることと、”人を切ることへの抵抗”という文化によって、退職は非常に難しい問題となっています。しかし、人材フローを考える際には出口から、つまり退職から考えるということが基本でなのです。
次にコントロールしにくいのは、外部との接点を持つ採用です。つまり人材フローは、退職→採用と考えていき、最後に昇進や評価、育成などを考えていくのです。昇進や評価、育成などは後からどうにでもなる部分です。なのでコントロールしがたい、制約条件の多いところから考えて設計する必要があります。しかし、往々にして多くの会社の人事は、一番手が付けやすいところから考えてしまいがちです。
このような前提があれば、新卒採用条件はプログラマーに必要なロジカルシンキングが強い人、といった一点に絞ることができます。採用の基本は「裾野を広げる」ということです。狭い範囲では良い人材を採用しにくいため、MUST条件は少ないほうがよいのです。プログラマーの例を用いれば、お客様の業務フローを設計できるコンセプシャルスキルが必要、などといったことは見る必要がなくなります。
このように人材フロー戦略の確立によって、おのずと採用方針も決まってきます。そして採用後の配置や異動、社内教育なども決まってくるのです。

トランジションと悲しみの5段階

ここでキャリア開発の基本として知っておくとよい大前提があります。
それは、キャリアとはトランジション(人生の転機)であり、トランジションには悲しみが付随する、ということです。大卒就職であれば、大学生活の終わりがあり、次の新しい時期が始まります。新しい始まりの方にばかり目がいきがちですが、”終わり”にも目を向けなくてはなりません。そして”終わり”には悲しみが付随します。就職や転職というのはおめでたいこととして語られますが、基本的には悲しみが伴うものである、ということを念頭に置いておくべきでしょう。
末期患者のケアを行い、多くの人の死を看取った精神科医エリザベス・キューブラー・ロスは、悲しみを5段階で説明しています。
まず一つ目のステップは否定から入ります。「いや、そんなことはないだろう」「何かの間違いだろう」と自分の中で否定するのです。ところがどうも本当らしい、ということになると「なんでこんなことになったんだ」「誰のせいだ」と怒りのステップがやってきます。しかし怒っても事態は好転しないので、次に現れるものが、「なんとかならないのか」という取引のステップです。色々やってみた、考えてみたけどダメそうだと気付くと「もう望みはない」「希望は消えた」といった絶望のプロセスがやってきます。ここで絶望を超えた先の最終ステップが、悲しみを受け入れた受容です。
人は悲しみに直面しても、否定、怒り、取引とステップを踏み、絶望を超えればその現実を受け入れて前に進むことができます。この悲しみとは死に関するような大きいものだけではなく、リストラされた、試験不合格、失恋、離婚など一般的な生活の範疇に存在する悲しみでも同様です。つまりマネジメントする側が、部下に「減給をする」というような話をするときにも、この5段階を経るのだということを分かっていれば、どのように対処していくべきかということが分かるでしょう。

<3行まとめ>
can、must、willの順番で。
転機には必ず悲しみが付随する。
悲しみを乗り越えるには、否定、怒り、取引、絶望、受容、という5段階を経る。